2026年5月24日 20:08
競馬も、そろそろラストに。
前述の国枝調教師と
双璧をなしていた名伯楽が、
2022年、定年で引退した「藤沢和雄」調教師でした。
国枝さんを上回る1500勝以上。歴代2位。
それまでの日本の競馬界の常識(=レースのムチや猛訓練、厳しい調教方法)を覆し、
「馬を大切に扱う」スタイルで、勝利を重ね、
現在の主流となる考え方や、
調教・運営方法も、決定的に定着させた調教師さん。
藤沢さんの有名な言葉があります。
「幸せな人間が、幸せな馬をつくる(Happy people make happy horses)」
牧場のご子息として生まれ、大学を卒業後、
1973年から4年間、競馬の本場・イギリスに、厩務員として留学。
日本で主流だった、スパルタ調教とは、
まったく異なる「馬も人もが、穏やかで楽しくいられる環境づくり」を
日本へ導入する原体験をする。
「Happy people make happy horses」は、
異国・イギリスでの修業に気負い、
難しい顔をしてピリピリしながら、馬に対応していた藤沢さんに、
同僚が教えた言葉だそうです。
イギリスでは、ホースマン自身が陽気で、
すれ違う人々と気軽に挨拶を交わすなど、笑顔でいられる環境がある。
そこから
「いつも笑っていられるような、幸せな状態にある人間こそが、、
幸せな馬、強い馬を育てることができる」という哲学の原型を学ぶ。
日本に帰国後、いくつかの厩舎を厩務員、調教助手として、回り、
野平祐二厩舎で、あの7冠の名馬「シンボリルドルフ」の調教助手として、
その主戦騎手、これも前述の「馬・優先主義」岡部幸雄に出会う。
ここで、点が線になった、確信に変わった(と、推察する)
1987年30代半ばで、調教師として、独立開業。
当時、ビシッと一杯に調教するのが、一般的だった時代に
「馬なり主体」調教=馬の気のままに走らせる調教。を行う。
「3頭併せ」調教=これまでの2頭での併せ調教に加えて、3頭を一緒に走らせる調教。を行う。
(群れで安心して走る、実戦に近い、能力や調子の比較ができる)
もちろん、当初、馬券を買う競馬ファンは、
「は???そんなゆるい調教で、勝てるわけないやろ」
「もっと、ビシッと一杯に仕上げんかい!ちゃんと気合いれろやー」
と、そんな感想を持っていました。(たぶん・・・)
一方で、
1992年、小さな牧場で生まれ、750万円の安値で取引された馬が、
栗東にできた「坂路」=坂道のトレーニングコースをフル活用した、スーパースパルタ調教で、
快進撃を続け、無敗でダービーを勝つ。
「サイボーグ」「坂路の申し子」という異名の「ミホノブルボン」と
ベテラン・戸山為雄調教師である。
藤沢さんもこの年から、シンコウラブリィという海外牝馬と岡部幸雄のコンビで、
勝ち続け、翌年G1をとる。
真っ黒の勝負服と、岡部幸雄が、かっこよかったー!
まさに、当時、対極的な存在でした。
藤沢調教師は、以降、勝利を重ね、通算1570勝。
功績をたたえた記念碑には「一勝より一生」という文字が刻まれています。
馬を育てるプロセスは、人間関係にも通じます。
「イライラした人は、馬を勝たせることができない、能力を発揮させることができない」
現代のビジネスや教育にも通じる普遍的な原則です。
↓↓
あくまでも走るのは馬だということ。そこを忘れてはいけない。
もっと本質を見抜くというか、馬の尊厳を大切にしないといかん。
馬たちが走ってくれるから厩舎の勝ち鞍も伸びていくし、GⅠを勝たせてもらっている。ついつい、目先の結果や数を使うことばかりを考えてしまいがち。
そうやって必要以上に強い調教をすれば、馬の大事な将来を駄目にしてしまう。
もちろん、競馬に耐えられるだけの調教をしなければならないところもあるんだけど、
走ることを苦しいと思わせてはいけない。
↑↑
インタビュー記事より。
馬をスタッフとして。
あるいは、スタッフからお客様へとして。置き換えてみてくださいませ。
馬と向き合うためには、まず人(スタッフや関係者、そして自分自身)が、
心身ともに満たされていることが不可欠だと考えていました。

パドックとの距離の近さが抜群の心地よさ
福島競馬場。
2026年5月23日 19:53
現在は、動物愛護の潮流もありつつ、
根拠を持って、ムチの使用回数に制限もかかってきました。
「馬の能力を最大限に引き出すためには、
叩き続けることではなく、
馬自身のリズムや気持ちを整えることが重要だ」
という考え方、アプローチが正解、主流となってきています。
近年の会社での人財育成にも、非常によく似ています。
※「ヒトは生物である」これは大原則です。
昔の職場では、「厳しく叱る」「詰める」「気合でやらせる」という育成が多かった。
短期的には成果が出る場合もあります。
しかし、中長期的には人が萎縮し、自主性も消える。
現在、これをしていると、離職にもつながる。
前述の通り、一流騎手ほど、
30年以上の昔から、むやみに鞭を使わないものでした。
普段から馬との信頼関係を築き、
折り合いをつけ、最後に少し合図を出すためにムチを見せる(見せムチ)だけで、
馬が自ら、伸びる状態を作っている。
会社も同じ。
優れた経営者やリーダーほど「怒鳴る回数」が少ない。
「怒られた」と感じさせない。
日頃から、ベースとなる信頼関係を築き、方向性を共有し、
働きやすい環境を整えている。社員が自ら動く。
もちろん、勝負所=要所での厳しさは必要である。
競馬でも、ムチそのものが禁止されたわけではない。
問題なのは、「いつもいつも、鞭に頼ること」なのである。
人が育たない会社の共通点。
それは、「普段の仕組み」ではなく、
「その場の叱責」で、動かそうとすること。
しかし、それでは根本的な会社の力が、上がってゆかない。
競馬も企業経営も、
今、本当に大切なのは「その場の追い込み」ではない。
日々の訓練・調教、信頼関係、環境・仕組みづくりである。
馬が、走ること・レース場を好きでいられるように。
ヒトが、仕事すること・職場に来ることを好きでいられるように。
真の勝負のとき、
少し背中を押せば、自ら走り出す状態を作れるかどうか。
そこに、
一流の騎手と、一流の経営者・幹部の共通点がある。
※
今、風車ムチは、ダメですよーー。
あのときは・・と、思い出話で済ませるように。
2026年5月17日 19:31
競馬のニュースを、もうひとつ。
競馬界では近年、「馬へのムチの使用回数制限」が強化されています。
・現在:2完歩おいて5回まで。違反すると段階的に罰金等。
・その前:連続10回までというガイドライン。
・さらにその前の時代:無制限。。
これは、先日のG1競走で、
そのムチ回数を違反してしまった騎手のニュース。

私が競馬を知った1980~1990年代は、
騎手が最後の直線で、何度も鞭(ムチ)を入れる姿が、当たり前でした。
馬券を買った身(特に、経済力のない人)としては、
最後まで、全力で鞭をふるって追い込む騎手に、とても好感が持てるのです。
記憶に残る「追い込みのムチ」は、
年に1度、海外の騎手と馬が集まっていた「ジャパンカップ」です。
ここで、海外騎手が見せる「風車ムチ」、
日本では、ほぼ見ることがない、ムチの使い方です。
腕をぐるぐる回し、躍動的に追い込むスタイルを見て、ほれぼれしていました。
1989年、日本のオグリキャップが2着。優勝馬ホーリックスのオサリバン騎手。
https://www.youtube.com/watch?v=CtI_mrlQ2l4
1992年、日本のトウカイテイオーが優勝。2着馬ナチュラリズムのディッドマン騎手。
https://www.youtube.com/watch?v=1mxCV_QMabY
かっこいいでしょ?
でも、この当時から、
ムチを最低限しか、使わない騎手もいました。
「ムチを使っても、使わなくても、実際、結果もスピードも、変わらない」
「ならば、馬が、“走ることを好きでいられる”ように、騎乗する」という主義の騎手です。
当時、ナンバーワン、通算2900勝(歴代3位)の岡部幸雄騎手が、その代表格。
「馬優先主義」を唱えていました。
まだ現役で頑張る、武豊騎手も、その系統。
馬の気持ちを理解し、ソフトに乗る。
乗っているか、乗っていないか、わからないように乗る。
当時は、
「けっ!馬・最優先主義が、まーた最後、直線、追わずに負けたで!金持ち(馬主)の犬が!」
と、思っていました。いや、思っている馬券購入者が多数いました。
金持ちのオーナーは、今、自分の馬を勝たせても欲しいが、
もし今、勝てないなら、次のレースこそ勝てるよう、大切に無事に走らせてほしい、と願う。
岡部や武のもとには、
良いオーナーが集まってきて、良い馬に乗れる。
だから、勝つ。すると、また、良い馬への騎乗依頼がくる。。この良いサイクルが回りだす。
しかし、
あの「風車ムチ」は・・・
私の記憶に、とどめておきたい。
(つづく)
2026年5月10日 19:52
働き方には、4つのステージがあります。
相手を優先するか、自分を優先するか。<存在論>
現実や事実を優先するか、気持ちや感情を優先するか。<認識論>
この2つの軸により、4つのステージが出来上がります。

まずは、
1:カオス(混沌)から始まる。
カオスを抜け出すためには、徹底的に「自分が誰かにとって、便利な存在」となる必要がある。
次に、2:部分最適のステージに行きます。
部分最適を抜け出すためには、「ある優良顧客に完全に密着し、学び、認められるようになる」ことが必要となります。
そして、3:全体最適のステージへ。
ここでは「自分そのものが、誰にも負けない商品=得意分野を極めること」が必要となります。顧客密着から「自分のこの技を欲しい!」と言ってくる状態=「この指とまれ」と言えば、来てくれるよう「一番を作る」作業です。買ってくれる相手の購入単位である「単品」で一番になる。
最後は、4:全員最適のステージへ。
「得意分野」が1個だけでなく、2個、3個、、とできてきて、それらを集約・統合して、
どんなことにでも、対応できるようになることです。
さて、
ここからが、私の真骨頂です。
「全員最適」を終えたら、また「カオス」へ戻れ。
表を見れば、4から1へ、矢印がある。
何気ない「←」ですが、実は、これこそが、真髄です。
すべての仕事ができるようになったら
「もう一周して来いよ!」ということです。
たとえば、
大手流通業のグループ場合。。。
1=百貨店グループが経営している、コンビニやスーパーです。
2=百貨店の外商です。
3=百貨店のある一商品、一部門のバイヤーであり、部門責任者です。
4=百貨店のどの部門に行っても、成績を残すマネージャーです。複数部門を管理できます。「百貨」を一番にできる「百貨店」そのものです
そのあと、もう一度、
1(スーパー、コンビニ)に戻る。あるいは、別の業界(たとえば不動産部門や新規事業)に行く。
競馬の世界なら、
1=馬と一緒に過ごしたい。と厩務員になり
2=素晴らしい馬(あるいは、騎手・調教師)に密着し学び、世界が広がる。
3=自分の技術を、買ってもらえるまで高める。このあたりで調教師となる。
4=どんな馬・人も勝たせることができるようになる。
4から1へ。
このことをできてこそ。
これからの資本主義を勝ち残る経営。
4までやって、また1234。またもう一度1234・・・繰り返し。
もっと最終的に大きな4に。
強い会社、大企業は、こうしています。
中小企業に足りないのは、こうゆう認識とサイクルです。
4まで行った人が、数週間だけ1になる。
1日だけでも1になる。
そんなところからでもかまいません。
国枝調教師が、厩務員へ。
このニュースを聞いて、感じたことでした。
2026年5月9日 19:19
大相撲に続いて、今度は、競馬。。
競馬の「調教師」とは、
馬主(オーナー)から、馬を預かり、
育てて、レースに出走し、勝たせることが仕事です。
馬を飼育する「厩舎」を運営して、人気の調教師の場合、約80頭。
大多数の厩舎が、50~60頭くらいの馬を預かっています。
厩舎には、主に馬のお世話(掃除、エサやり、ブラッシング、運動など)をする「厩務員」や、
馬のトレーニングを行う「調教助手」あるいは「専属の騎手」が、所属しています。
JRA全体で、
調教師=厩舎の数は、200近くとなります。
いわば、「厩舎」は、
オーナーから経営をまかされた「会社」や「レーシングチーム」のようなもの。
調教師は、そこの経営者・リーダー。ということになります。
今回のブログは、
最近、定年で現役を引退した「国枝栄調教師」について。
歴代調教師のなかでも、
通算勝利数で10位にランキングされる「名伯楽」
2頭の三冠牝馬「アパパネ」と「アーモンドアイ」が、代表管理馬です。
このように、牝馬を育成することに定評があり、
「牝馬の国枝」と言われていました。
その国枝調教師が、引退後、
厩務員ヘルパーとなった、というニュースです。

いわば・・・
会社の経営者が、
1パートスタッフとして、現場で働くようなもの。
世に知れたスーパーの経営者が、
毎日、とある1店舗で、1従業員として、
レジ担当や、鮮魚のバックヤードで魚をさばく仕事に就くのと同じことです。
このニュースに関して、
書き留めておきたいことがあります。
(つづく)