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功労者には勲章を。実務につけると百害を生じる。私利から公利へ

前回ブログには、
メイン・タイトル「任せる人、任される人」の原則のほかに、
もうひとつ、大切な原則を紹介しています。

山本権兵衛のこの言葉である。
「功労者には勲章をやればよいのです。実務につけると百害を生じます」

これを、もう少し深く。
この原則は、
「功には禄を、能には職を」あるいは、
「功には賞を、徳には官を」とも、言われます。
中国の書経に出てくる言葉を、西郷隆盛や徳川家康が引用し、有名になっています。
https://cleaning-keiei.com/nakanishi/2013/04/05/
詳しくは、以前のブログにも書いています。

功績のある者には、より高い給与を与え、
人徳・能力のある者には、より高い地位を与えよ。
功績のある者でも、人徳・能力のない者には、
高い地位・リーダーとなる役職を与えてはならない。と説くものです。

「功」とは個人の実績。
「功」に対しては、「職・官」(役職・組織の長とすること)を与えるのではなく、
禄(給料・賞与)で酬いる。ということです。

役職(=組織のリーダー)に就ける際に大事にするのは、
個人の実績ではなく、組織としての力を発揮できる能力があるかどうか。
個人の実績が優れているから・・・と、その人を組織の長に据えると、
スタッフが辞める、チームのパフォーマンスが下がる、問題が続出する、
組織自体の方向性が意図と異なる方向に向かう、など、
全体に悪影響を及ぼすようになってきます。

人間の欲には「私利私欲」と「公利公欲」とがあります。
我欲、自欲、私欲、利己心は、自分が良い思いをするために、生じる欲求であり、
公欲、利他心、徳とは、自分以外の人のために役立ちたいという欲求です。
お客様に喜んでもらいたい、
部下に幸せになってもらいたい、成長してもらいたい、
所属組織のために貢献できることをしたい。
こういった欲求のことを「公利公欲」と言えるのではないでしょうか。

が、それは「私利私欲」の進化系と言えます。

「マズローの5段階欲求論」に当てはめれば、
3段階の「社会的欲求」や4段階の「承認欲求」までが「私利私欲」
5段階の「自己実現欲求」となれば「公利公欲」に近づいてきます。

人間である以上、自らを満たしたい欲求があります。
「たくさん給料をもらいたい」「高く評価されたい」
「他者に勝ちたい、負けたくない」という「私利私欲」が原動力となって、
人一倍仕事を頑張った結果、個人プレイヤーとして優れた実績を残すことも、多々あります。

問題は、そこからです。

そこで止まれば、つまり「功だけでよい=禄がもらえればそれで良い」という人は、
時代の変化、求められる能力の変化、自分の体力の低下とともに、
やがて、組織のなかに居場所がなくなります。

ヒナが卵の殻を割って、出てくるのを、少し手助けしてやるように。
「私利私欲」人間が「公利公欲」に進化できるように。
マズローの5段階目に到達できるように。
本人が永く活躍できるように。

そうゆう視点で、部下と向き合ってみては、どうでしょうか?


トップたる者、実務者たる者。西郷兄弟・大山巌、山本権兵衛の仕事

パッと手に取った第三巻の中で「折れ線」をいれた部分の中からランダムに、
主な登場人物たちの描写を紹介するシリーズ・第三弾。
今回は、西郷従道と山本権兵衛の描写。
トップと実務者の関係について。

「人間が大きい。という点では、大山巌だろう。
いや、西郷従道のほうが、5倍大きい。
その従道でも、兄の隆盛の前では、月の前の星だった」明治の閣僚たちが集まって話す。

この薩摩の血縁者(西郷は兄弟、大山はいとこ)3人は、同じ方法を用いる。

まず、自分の実務をいっさいまかせる優れた実務家を探す。
自分の感情も利害もおさえて、選択する。
そのあとは、その実務家のやりたいように、広い場を作ってやり、
何もかも、まかせてしまう。
ただ、場を作る政略だけを担当し、
もし、その実務家が失敗すれば、自分がさっさと腹を切る。という覚悟を決め込む。

西郷従道は、海軍大臣をつとめたが、海軍の知識は全くなかった。
そこで、実務者に、山本権兵衛を起用した。
「なにもかも、思うとおりにやってください。
やりにくいことがあれば、私が掃除に出かけます」

山本は、海軍の老朽・無能幹部を大量に首切りした。
「大整理をして、有能者を重職につける以外に、いくさに勝つ道はありません」

当時は「薩摩出身である」というだけで、
重職につき、高給を食む人間が多かった。
しかし、無能であっても維新の功労者であることには変わりがない。

「功労者には勲章をやればよいのです。実務につけると百害を生じます」

山本は、功労者の首を切ったあとに、
正規の兵学教育を受けた若い士官を充当するつもりである。
「恨まれますぞ」と、従道。
「むろん彼らは恨むでしょう。しかし、国家がつぶれてしまえば、なにもかもしまいです」

山本は、首切り仕事を西郷従道に押し付けず、自らやった。
該当者を副官室によび、自ら宣告した。
一大佐に過ぎない身分で、少将・中将の首を切った。

・・・・
トップと実務者、今にも通ずる、普遍の原則。理想のかたちである。


自分の身の在りよう。根本的な人間の思考。~秋山好古の教え

パッと手に取った第三巻の中で「折れ線」をいれた部分の中からランダムに、
主な登場人物たちの描写を紹介するシリーズ・第二弾。
今回は、秋山真之の兄・好古について。

「参謀の要務というのは、
円転滑脱(物事がなめらかな様子)として、上と下の油にならなければならない。
功名を断じて顕(あら)わしてはならない」

「国家が衰退するのは、つねに、上流階級の腐敗よりおこる」
「一家一族、邦家の実利に挙げ、名利は放棄して、速やかに閑するを要す」

一族を挙げて国家に実利を与え、
自分はその功績による名誉と利益をうけない。

国家の繁栄が、至上の正義であり、
彼のロマンティシズムの源泉である。

他にも、
「男子は、生涯一事をなせば足る」

「身辺は、単純明快が良い」

「歴とした男子は、華美を排するのだ」

「一個の丈夫が金というものでひとの厄介になれば、
そのぶんだけ気が縮んで、生涯しわができる」

「質問の本意をきかずに、弁じたてるというのは、
政治家か学者のくせだ。軍人はちがう。
軍人は敵を相手の仕事だから、敵についてその本心、気持ち、
こちらに求めようとしていること、などをあきらかにしてから、
答えるべきことを答える。
そういう癖を平素身につけておかねば、
いざ戦場にのぞんだときには、一般論のとりこになったり
独善におち入ったりして、負けてしまう」

弟・真之へ、人として、男子として、根本的な姿勢を教え、体現する描写が多い。

私も、真之と同じように、
書籍のなかで、好古アニキに薫陶を受け、教えてもらっている。
勝手に、兄弟の一員のつもりになっている。

・・・・
ドラマ第一回放送のなかでも、そうゆう面が、たくさん垣間見えていましたね。

「一身独立して、一国独立す」
福沢諭吉の「学問のススメ」から、この文章を引用し、真之に説明する。
「人、一人一人が独立して、初めて、国家が独立できる」

国に何とかしてもらおう、世間が悪い、会社が悪い、学校が悪い。
ではないのだ。
まず、自分が一人前に独り立ちする。それで初めて、自分の所属する組織も独立できる。良くなる。
それが「人として生きる常識」なのである。


なぜ、軍人になった?と尋ねる父に、
「私は、まず、食べることを考えている」と、返事する。
「士官学校は、タダの上に、小遣いまでくれますけん」

「人は、生計の道に講ずることにまず思索すべきである。
一家を養いえて、初めて一郷と国家のために尽くす」「父上の教えです」

「何がしたいから・・・」とか、「自分に向いてる仕事がないから・・・」とか、
好き好みをやっている場合ではない。
誰のスネもかじらず、まず第一に、自分が食べること=給料を稼ぐこと。を考える。

私の師匠は「売ることは、生きることに先んずる」と言った。
まさに、このことである。
今、すべての若者にお伝えしておきたい。


優秀な戦術家、作戦立案者になるために。秋山真之の戦術

「坂の上の雲」書籍のほうには、どんなことが書かれているのか。
・・・・
パッと手に取った第三巻の中で「折れ線」をいれた部分の中からランダムに、
主な登場人物たちの描写を紹介します。

秋山真之の海軍戦術の体系化は、昔の水軍の兵法を基礎にしている。
古来の水軍戦法には、このような戦法がある。
「虎陣、豹陣」
虎軍=本軍。豹軍=弱そうに見せる軍。
弱い軍(豹軍)が誘い込み、島陰に隠れていた強い軍(虎軍)が、一気に叩く。

「舟を攻めずして、人心を攻む」
孫子の兵法=戦わずして勝つに通ずる。
敵艦を沈める、人を殺すことに重点を置くと、多大なエネルギーを用いることになる。
敵の気持ちを奪って、
勝ちを制することを、第一に考える。

甲州軍学も学んでいる
「車がかりの陣」
次々と、新しい軍隊を繰り出して戦う。
敵の兵力が「銀」ならば、こちらは、いつも「金」を用いて戦う。

これらはすべて、日本海海戦で、ロシア・バルチック艦隊を破った戦術に応用されている。

真之は、兵学校で講師もつとめた。
戦術講座は「不朽」といわれるほどの名講義であった。
戦術そのものよりも、
どうゆう風にして、それを完成できたか?を、繰り返し教えた。
「あらゆる戦術書を読み、万巻の戦史を読めば、
諸原理、諸原則は、おのずから引き出されてくる。
みなが個々に自分の戦術を打ち立てよ。
戦術は借り物ではいざというときに応用がきかない」
生徒の回答が、自分の意見と異なっていても、悪い点はつけなかった。

切れば血が出るような具体性に富んでいた。
ロシア艦隊を仮想敵にしていたからである。性能、運動のくせ、作戦の発想など。

そのかわりに、
先輩に対して、遠慮も敬意もない。
「戦術に愛嬌がいるか!」というのが、真之の流儀であった。

もちろん、秋山真之に会ったことはないが、書籍の中で師事して学んでいる。
今の自分のコンサルティングに生きている。


滅多にないことですが・・オススメの書籍と番組について

NHKで、
9月8日から、毎週日曜日23時「坂の上の雲」というドラマの再放送が、始まります。

詳細は、こちらから。
https://www.nhk.jp/p/ts/X7PG14YX57/
皆さんは、観なくても良い(もう、手遅れ??)でも、
身近にいる、小学生以上、20代までの世代(あるいは、その心を持つ人)には、是非とも観てもらいたい。

まず、導入として、このドラマを。
その後、できれば、書籍を読んでもらいたい。
※書籍に書かれている深く大切な原理原則=たとえば下記のような内容は、ドラマには、ほぼ出てこないです。
https://cleaning-keiei.com/nakanishi/2019/03/23/
以前のブログでも、軽く内容をお伝えしている。
未だに、私の本棚に残り、
これだけの量の「折れ目印」をつけられている、私がリスペクトする名著である。

あまり、この本が良い。とか、この番組が良い。オススメ!とか、
言わない性分です。
(そうゆうものは、自分で探すもの、出会うもの)と思っているから。

でも、思い返せば、この本は、
船井総研・1年目のとき「龍馬が好きです」と、入社してきた私に、
先輩が「坂の上の雲は、読んだのか?」と教えてくれたことが、きっかけでした。
司馬遼太郎作品のなかで、
龍馬がゆく=まだ、おこちゃま。書生。
坂の上の雲=大人。本物。プロ。と(優しいから、口には出さないけれども)そう言いたげな雰囲気で。
・・・・
会社という組織は、利潤追求の集団だったけれども、
それだけでない、尊敬できるフトコロの深い先輩がいました。

先輩に教えてもらったことへの、恩返しの意味も込めて、ここで紹介します。


ドラマの冒頭に、渡辺謙さんの名ナレーションがある。
「まことに小さな国が・・・」からはじまる。
そして、締めのフレーズは
「彼らは明治という時代人の体質で、前をのみを見つめながら歩く。
上って行く坂の上の青い天に、もし一朶(いちだ)の白い雲が輝いているとすれば,
それのみを見つめて,坂を上っていくであろう」

これが、書籍タイトル「坂の上の雲」の由来である。


大阪の地下街から階段を上がってゆく、この風景。
(坂の上の雲、って、こんな感じかなー)
と思いながら、本日も、出張です。





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